「言霊って信じる?」彼女は私に聞きました。「不安になったら、絶対受かる!って言ってみればいいよ。そうすれば自信も湧いてくるでしょ?」ほんの数日間の私の友達は、こうやって私を励ましてくれました。
私は6年生の5月に、他の人より遅れて入塾しました。だから私が入塾した時には既にみんな仲良しの友達が決まっており、私はなかなか友達を作ることができませんでした。そして何より、今まで学校の授業しか受けていなかった私は、塾の授業の速さや、学校とは比べ物にならない量の宿題についていくのに精一杯で、友達なんて夢のまた夢でした。やっとマスターコースの宿題に慣れたかと思うと、すぐに夏休みで宿題が増え、さらに日曜志望校別特訓が始まり、何度泣いたか分かりません。
受験日が近づくにつれ、登塾する教室も片道一時間以上かかる場所になりました。私が毎日乗っていた電車にはもう一人同じコースの女の子がいました。友達になりたかったけれど、なかなか声を掛けられない日が続きました。ある日、私が電車の時刻表を見ていると、「どこの電車に乗るの?」と声を掛けられました。その女の子でした。それがきっかけとなり、彼女とはあっという間に仲良しになりました。お互いあだ名で呼びあったり、いつもと違う電車に乗ってみたり、ゲームをしたり、成績が良い彼女に勉強方法を教わったり。受験日が近づき私が不安な色を見せるたび、彼女は笑顔で励ましてくれました。最後の塾の日、二人で頑張ろうねと言い合ったのを私は忘れません。二人の共通の志望校に私は届かなかったけれど、駅で私が見えなくなるまで手を振り続けていた彼女は、今もこれからも私の憧れの人です。