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執筆:北嶺中学校 社会科教諭 飛田 公宏

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大から3年が経過する中、ウクライナでの戦争が勃発し、経済的には円安の進行と物価上昇など、不安なことが多く、先の見通せない日々が続いています

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しかし、過去を振り返ってみると、人々が不安におびえる時代が日本にありました。例えば、平安時代末から鎌倉時代にかけてです。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が現在放映されており、ドラマには武士や公家が登場していますが、その時代も戦争の時代で、ドラマの裏には多くの苦しむ民衆がいたことは間違いないでしょう。もちろん、現代の戦争と全く同じととらえることはできませんが、時代が違っても戦争が起きて不安を感じない人はまずいないでしょうから、そういう意味において今も昔も同じだと思います。10世紀の「承平・天慶の乱」以降、大きな戦乱がいくつも続き、さらに、飢饉の発生、疫病の流行など絶えず人々は不安な社会に身を置いており、身分の低い貧しい人々にとっては尚更だったことでしょう。

 さて、今年の3月から5月にかけて、東京国立博物館では「空也上人と六波羅蜜寺」という特別展が開かれました。京都の六波羅蜜寺が所蔵する「空也上人像」など平安・鎌倉時代に作られた彫刻作品が、東京で半世紀ぶりに公開されました。空也は平安時代中ころ、京都市中で貧しく、苦しんでいる人々に「南無阿弥陀仏」と唱えれば救われることを説いた僧で、「市(いちの)聖(ひじり)」とも言われました。人々を救うべく布教をしている空也が、「南無阿弥陀仏」と発すると、その一つ一つの言葉が6体の阿弥陀仏となった姿を、鎌倉時代になって、金剛力士像の作者の一人で有名な運慶の四男の康勝が彫刻作品としたのが「空也上人像」です。

作品とした康勝には、おそらく貧しく苦しんでいる民衆とともにあり、「心の平穏」をもたらそうとする空也への尊敬の念があったことと思いますし、そういった人物を後世に伝えたいという思いがあったのではないかと推測されます。不安な社会状況下であっても、民衆に「心の平穏」をもたらそうとした僧がいたこと、そのように人に救われ、尊敬の念を抱いた人々の思いが伝わり、混沌とした世界に生きる現代の私たちにも何かを訴えてくるような特別展でした。このような特別展に行けなくても、京都の六波羅蜜寺で見ることができるので、金閣寺や清水寺などの有名な寺院ももちろん良いのですが、京都に行く機会があれば、六波羅蜜寺にも足を運んでみてはどうでしょうか。

 本校では3月後半に高校2年生を対象に東京大学見学ツアーを実施し、そのまま東京で解散した生徒も多くいました。その足で東京国立博物館に足を運んだ生徒が何人かおり、「授業に出てくる人物の作品を直接見たことに感動した」「何となく空也の思いが伝わってきた」といった感想を、4月に新学期が始まると聞かせてくれました。小さいことかもしれませんが、そういったことに関心を持ち、何かを感じることのできる生徒を一人でも多く育てたいと、改めて思いを強くさせてくれるとともに、そういう小さな気持ちが集まることで、真の平和や安定、人々の「心の平穏」を取り戻していくきっかけとなるのではないでしょうか。

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