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進学教室浜学園が独自の切り口で中学校を取材し、その魅力をお伝えしていきます。
男女別学・共学の議論に限らず、灘のコンセプトは「変えんでいいことは、変えんでいい」。新しいものも取り入れつつ、できるだけ昔のものを生かしていく。
今回は、そんな灘中学・高等学校の教育についてお話を伺いました。

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「変えんでいいことは、変えんでいい」旧制中学校としての灘

―少子化が進む中で、男女別学の学校はどんどん少なくなってきています。そんな中で、灘中学・高等学校が男子校を貫いておられる理由とはなんでしょうか。

男女別学・共学の議論に限らず、灘のコンセプトは「変えんでいいことは、変えんでいい」というようなものです。新しいものも取り入れつつ、できるだけ昔のものを生かしていく。それが灘のコンセプトなんですね。

灘は、日本に残された最後の旧制中学校です。旧制中学校は5年制だったのですが、戦後の学制改革で、小中高が6・3・3年という、現行の制度になった。多くの旧制中学校が5年制から新制高校の3年制へと切り替える中で、灘はむしろ1年増やし、6年制の中高一貫校としました。旧制中学校のときのやり方を、なるべく変えずにここまで来たというわけです。

昔は男子しか旧制中学校へ入れませんでしたから、「男子校をつらぬく」というよりは、旧制中学校のままここまできた、という形です。これは教壇に立つ教師も同じで、非常勤の先生や職員を除けば、全員が男子教員です。クラスの代表も「学級委員」ではなくて「級長」のままですね。

男子校のままにしておくメリットとしては、これは他の男子校にも言えることかもしれませんが、少なくとも中学の間は、女子がいないほうがのびのびと活動できる子が多いように思います。小学校高学年から中学校くらいまでは、女子の方が発言力があり、気の弱い子だと押されてしまうことも珍しくない。男子しかいない環境であれば、女子の目を気にすることなくのびのびできるというのが良さだと思います。

―旧制中学校のままここまで来られたとのことですが、カリキュラムについてもそうなのでしょうか。

科目に関して言えば、中学生の段階ですでに「理科」「社会」という科目を設けていません。それぞれ、「物理・化学・生物・地学」「世界史・日本史・地理・公民」と専門の科目に分けられていて、総合的な科目とはなっていないんですね。
一方で国語に関しては、「現代文」「古文」「漢文」すべてを一人の教員が教えます。現代文の先生、古文の先生、漢文の先生、と分かれているのではなくて、すべてを教えられる先生しかいないというわけです。こういった科目の分け方も、旧制中学校の「国漢」を踏襲しているのです。

―「変えんでいいことは、変えんでいい」という話が出ましたが、2020年の教育改革に向けて、何か実施されていることはあるのでしょうか。

「変えんでいい」のは「変えんでいい」ことだけですから、必要なことはもちろんします。たとえば英語はネイティブの教員を置いていますが、ALT(授業補佐)という形ではなく、非常勤講師1名、正教諭として2名の方に来ていただいています。

ただし、教育改革について言えば、とくに焦ってはおりません。制度が変わるたびにバタバタするのではだめで、本物の力がついていれば、どんな制度になっても太刀打ちできる。基本はその考え方です。

希望がなければ「進路指導」はしない

―灘といえば、なんといっても進学成績がめざましいですが、進路指導はどのようにされているのでしょうか。

進路指導ですが、生徒からのオファーがない限り特にこちらからはいたしません。親御さんを交えた懇談ではさすがに少し話しますが、「ここにせえ」とか「やめとけ」ということは一切ございません。たとえ、今の実力では合格が難しい大学であっても「君がどうしても行きたいんやったら、チャレンジしたらええよ」と言います。

とはいえ、教えるプロとして客観的な意見は言います。なぜなら、親は過剰な期待を持ってしまうから。生徒の本来の実力を見て、生の姿で向き合って、本音で勝負する。その関係を、六年一貫の中で築いていくわけです。

―医学部進学者が多いこともよく知られていますが、文系の子はどのような生徒なのでしょうか。

確かに、医学部進学者が多いのは事実です。どういう形で人の役に立てるかがはっきりしているし、親も賛成してくれる。世の中、「医者なんてやめとけ、なんでそんなもんになるんや」と反対する親はいないでしょう。加えて、子供の気持ちからすれば、難しい試験に挑戦するわけですから、クリアできればプライドがくすぐられる。色々な面で、目指したくなる要素が詰まっているんですね。

一方で文系に進学する生徒は、本当に先を見据えている子が多いように思います。昔は「数学ができへんから、文系にしとこう」という子も中にはいました。でも、今の時代に文系の進路をとる子は、数学や理科系の科目の成績がよくても「やりたいことがあるから、文系」という子が多い。自分の将来をしっかり考えている子が本当に多いですよ。

世の中を見回してみると、これまで「安定」とされてきた文系の就職先はことごとく雲行きがあやしいんですね。「潰れない」と言われていた銀行もつぶれる。上級官僚のモラルは低下し、社会からの信用が失われている。弁護士は人数が余っている。職業という形で「何をする?」が見えにくい時代なんです。

その中であえて文系の進路をとろうと思ったら、「それでもやっぱり官僚は必要や」「政治が必要や」と考えるような力強さが必要になります。世の中が順風満帆じゃないからこそ、自分がそれを動かしてやる、という子が文系に進むんですね。文系進路の子には、目先の利益にとらわれない、意志の強い子が多いように思います。

一枚も二枚も上手な教員、身近な教育者である先輩

―進学実績だけでなく、自由な校風も有名ですね。制服がないのもその一例なのでしょうか。

制服がないのは、学園紛争がきっかけ……というと、実は少し語弊があります。僕はちょうど当時の生徒だったので、詳しく説明します。

当時は、学園紛争の運動がワーッと盛り上がり始めたところでした。何かの運動を盛り上げ、士気を高めるには「目に見える成果」が必要ですよね。学校と争ったことによって、「頭髪の自由化」「制服の廃止」を勝ち取った。こういう成果が出ることによって、子供達は結束するんです。

ただ、この学校は一枚も二枚も上手だった。こちらの運動が盛り上がる直前に、前もって「この日から、頭髪を自由化します」「制服をなくし、私服を認めます」と通達があったんですよ(笑)。頭髪の自由化を勝ち取ろうとすると、先取りをして自由化される。では制服を……と考えると、これも先んじて私服化する。それによって、こちらの運動を潰しにかかったわけです。その巧みさには、生徒ながらに舌を巻きましたね。

―先生と生徒の信頼関係が築きやすいのが六年一貫の良さとのことですが、生徒同士はどうでしょうか。

中学生と高校生が同じ空間にいるというのは、生徒にもいい影響を及ぼします。まず中学生にとっては、「あの人のようになりたい」という身近な目標ができます。そして高校生にとっては、面倒を見る対象ができるため、「自分が育てなあかん」という自覚が芽生えます。中高一貫教育は、中学生と高校生の双方にとって効果的だと思います。

また、細かなしつけの面は、教師よりも上級生が教育することが多いです。たとえば言葉遣いについても、教師はいちいち細かな点を咎め立てすることはありませんが、上級生は「今の言い方はあかんやろう」と指摘してくれています。

灘とは「生徒が生徒を育てる学校」

―最後に、灘の魅力についてお話しいただけますでしょうか。

「子供らは、横を見て自分のやることを見つけるもんやな」と思います。クラスにすごい子がいれば、「自分には何ができるんやろう」「自分でもできるんちゃうか」と考えて努力する。「あの子は別格」だとか、「自分とは違う」と距離を置いてしまわずに、自分のやる気に変えるんですね。

灘の教員は一流であるし、一流であろうと努力します。でも、灘は生徒が生徒を育てる学校。勉強のことだけではありません。たとえば趣味に打ち込んでいる子は、勉強ができる子を「すげえなあ」と思うでしょう。しかし勉強ができる子にとっては「あいつは好きなことがあってすげえなあ」と思える存在かもしれない。きらきらして見えるんですね。そんな風に、お互いが敬意を持ちながら、自分にはないものを認めること。それが、「生徒が生徒を育てる」ということなのです。

本校への受験を考える前に「うちの子、水泳が好きで、水泳やめさせられるんやったら受験勉強なんかせえへん、とか言うんです」と相談に来てくださったお母様がいらっしゃいました。私は「水泳させたらええ」と言いました。その子はちゃんと本校に合格しましたし、入学後も水泳をやり続けて、国体のリレーメンバーにも選ばれました。

灘に入学して来てくれるような子は、本気になったらなんでもできる。どこまでもいけるんです。でも、「このくらいでやめとこうか」と大人が線を引いてしまったら、そこで伸びなくなってしまう。本校の生徒は、文化祭も体育祭も一生懸命やります。夢中になるときは夢中になれる。それが灘という学校なんです。

―どうもありがとうございました。

取材日:2018年4月20日