【中学受験】有名中学 現役教諭の ”理科” 特別授業 ~「波」の不思議 〜
有名中学の授業は、好奇心をくすぐる仕掛けが盛りだくさん。そして、学ぶことの本質を突いた授業は、探求心あふれる生徒を育てます。
さあ、あなたも知的な冒険に出かけましょう!
「波」の不思議
執筆:北嶺中・高等学校 理科教諭 岡本 修二
皆さんは「波」という字がついた言葉をよく耳にすると思います。例えば「音波」「電波」、そして恐ろしい「地震波」や「津波」等。この「波」というものに共通する不思議な性質を考えてみましょう。
さまざまな「波」に共通する性質
一本のロープを床に真っ直ぐに置き、ひもの端をロープと垂直で床と平行な向きに素早く一回だけ小さく左右に振ると、図1のようにまるでヘビがくねくねと進んでいくような波(山と谷)が、ロープの反対に向かって進んで行きます。

このとき、波は進むのにロープ自体は進んで行きません。これはロープの端で発生した振動が、となりのロープ部分へ次々と再現されながら伝達されるからです。
次に、ロープの両端で、さっきと同じ振動を同時に加えてみます。すると図2のように二つの波はそれぞれ逆向きに進み、やがてぶつかります。
さて、ここでも不思議なことが起こります。それは、図3のように、ぶつかった後もそれぞれの波が元の形で元の向きに進んでいき、何事もなかったかのようにすれ違うのです。

これをスローモーションで見てみると、さらに不思議なことが起きていることが分かります。図4のようにすれ違っている間もそれぞれの波は元の向きと形を保っており(点線が左に進む波)、ちょうど山と谷が重なった時に互いに打ち消しあった結果、一瞬波が消えてしまうのです。もし、山と山、谷と谷が重なれば強め合って大きな山と深い谷ができることになります。これは「波」共通の性質なのです。

実は身近なところで使われている「波」の性質
ところで、「ノイズキャンセリング」という言葉を聞いたことはありませんか?イヤホンやヘッドホンで音楽などを聴くときに、周囲からの騒音(ノイズ)を減らす(キャンセル)技術です。
この原理は、先ほど説明した波の性質を利用しています。音も「音波」という波であり、この場合は空気が振動を伝えて私たちに音を運んできます。イヤホンで音楽を聴くときに外部の音が邪魔をしないように、上で説明したように騒音の波に山谷が逆の波をぶつけて打ち消しているのです。ただし、騒音の波には様々な大きさや形の違う山谷が含まれているので、それらを即座に分析して逆の山谷をぶつけるためには高度な技術が必要です。
二種類に分類される「波」
「波」は振動が伝達されていく現象ですが、その振動方向によって二種類の波に分類されます。図5はバネの左端にバネ方向の振動を与えたときにできる波です。縮んだ部分が右に移動していくのが観察できます。

圧縮されたり伸びたりする振動が伝達されていくのです。これを「たて波」と言い、例えば「伸び」と「圧縮」が「山」と「谷」に対応するようなイメージです。そしてロープのヘビくねくねは「横波」と言って区別します。音波も空気が「圧縮」と「伸び」をくり返しながら伝わる「たて波」の仲間です。
さて、皆さんは地震を大なり小なり経験したことがあるでしょう。日本の地下では固い岩の層(岩盤)が絶えず押し合っているので、限界を超えると岩盤が破壊され、地下で大きな振動が生まれます(震源)。このときの岩盤の複雑な変形により「横波」と「たて波」が同時に発生します。もし、震源が今いる場所の真下(直下型地震)にある場合は、「たて波」の方がより速く地中を伝わる性質があるので、先に地表に到達して地面に垂直な上下の強い振動を加え、次に遅れてやって来た「横波」が地面を左右に揺らして時には立っていることを困難にしたりするのです。
地震国日本に住む我々は、このメカニズムを覚えておくだけでも少しは冷静な行動ができるかもしれませんよね。そしていつの日か「地震波キャンセリング」や「津波キャンセリング」が開発される日が来るといいですね。
株式会社 浜学園
